華瀬良様より

チョコレート

広い部屋を見渡しながら、なぜ自分がこんなことをしなくてはならないのかと
思わずため息をついてしまう。
なぜ闇の魔導師ともあろう俺が掃除などしなくてはならないのか・・・。

「ぜんぜん進んでないじゃないのよ!そんなんじゃ報酬ださないわよ!」
声の主の方を見ると、ソファーでくつろぎながらのんびりと本を読んでいる。
蒼く柔らかな髪が顔にかかり、少し邪魔そうに手でかきあげた。
声の主とは他でもないルルーのことである。

シェゾは手に持った雑巾をルルーに投げつけてやりたい気持ちだった。
あんの糞アマ〜!
しかしお金に困っていたところ、ルルーから家の掃除の依頼があり
引き受けたのは他でもないシェゾ自身の意思である。
仕方なくシェゾは掃除を続けることにした。

雑巾で窓を拭きながらシェゾはルルーに尋ねた。
「お前飽きもせずさっきから何の本読んでんだ?」
「チョコレート菓子の本よ♪もうすぐバレンタインでしょ?」
「バレンタインだぁ〜?」
「そーよ!やっぱり愛する人には手作りチョコをプレゼントしないとね♪」
「ケッ、くだらねぇ。」
思わず悪態をついてしまう。

ルルーはサタンへ贈るチョコレートを考えているのだろう。
もっともサタンがそんなものに興味があるのかどうかもわからないが。
あのおかしな魔王のことだから、カーバンクル型のチョコでも作れば
誰から貰っても喜びそうであるが・・・。
とにかくそんな浮かれたルルーをみているうちに
シェゾは段々と腹立たしく感じてきた。
いけ好かない魔王へルルーがチョコを作ろうとしているから面白くないのであろうか。

「そんなイベントごとに踊らされるってことはお前も一応女だったんだな」
「なっ・・・!あんたってほんと口が悪いわねぇ。一応は余計よ!」
唇を尖らせながら拗ねたようにルルーが言う。
その仕草にドキリとしてシェゾは思わず目を逸らした。

「でも、シェゾも楽しみにしてるんでしょ?バレンタイン。」
「なんで俺が楽しみにしなきゃならないんだ。」
闇の魔導師である俺にそんな行事は不要だ。
「シェゾだってチョコを貰いたい相手くらいいるんでしょ?」
「な・・・」
言葉に詰まるシェゾ。
そう言われてとっさに思い浮かんだのが目の前にいる女だなんて
口が裂けても言えやしない。
しかもルルーから自分は嫌われているのだ。
サタンしか目に入っていない彼女からチョコなど貰えるわけがない。

「俺は嫌われてるからチョコなんて貰えねぇよ。」
なるべくルルーの顔を見ないようにしながらシェゾは言った。
「そんなのわからないじゃない。なんならチョコ欲しいって自分から言ってみれば?」

こいつは一体俺が誰からチョコを貰いたいと思ってるんだろう・・・。
一番考えられる可能性はアルルと勘違いというところだろうか。
アルルには「お前(の魔力)が欲しい」発言をしているせいで、
俺がアルルに気があるなどというとんでもない噂まで流れてしまっている。
こいつもその噂を信じているのだろうか。
なんだか異様に腹立たしくなってきた。
目の前にいる鈍感な勘違い女が憎らしくて仕方がない。

「とにかく俺は嫌われてるからその女からは貰えねぇの!
わかったらもうその話はするな」
イライラして声を荒げた。
そんなくだらない行事なくなればいいと思った。

ルルーは開いていた本を閉じると
「あたくし別にシェゾのこと嫌ってなんていないのに。
手作りのチョコ楽しみにしててね♪」と微笑んだ。

ソファーから立ち上がると伸びをして
「ちょっと出かけてくるから。ちゃんと掃除終わらせておきなさいよ。」
そう言い残して部屋からルルーは出て行ってしまった。

・・・あいつ俺の気持ちに気づいてたのか・・・?!!!
部屋に残されたシェゾは硬まったまま顔を赤くしていた。




あとがき
バレンタインが近いということで
チョコレートネタです。
またしてもキャラ崩壊。
特にうちのシェゾはかなりのヘタレです・・・。
バレンタイン編への続編考えていましたが
間に合いませんでしたil||li _| ̄|○ il||li